犬の除去食試験とは?アレルギー検査との違い
除去食試験とは、原因となりうる食材をすべて除いた食事を一定期間与え、症状の変化を観察する診断方法です。犬の食物アレルギー・不耐性を診断するうえで、現在もっとも信頼されている方法とされています。血液検査や毛髪検査とは何が違うのか、整理してみます。
愛犬がかゆがったり、お腹を壊したりすると、食物アレルギーを疑うことがあります。動物病院で「除去食試験」という言葉を聞いたり、自分で調べていて知ることもあるかもしれません。一方で、血液検査や毛髪検査という選択肢を耳にすることもあります。
除去食試験とは何か
除去食試験とは、原因となりうる食材をすべて除いた食事を一定期間与え、症状の変化を観察する方法です。
なお、かゆみなどの症状で受診した場合、すぐに除去食試験に入るわけではないことが多いようです。まず、疥癬や真菌感染など、食物アレルギー以外の皮膚疾患の可能性を先に確認し、それらが除外された段階で、除去食試験が検討されるという流れです。
期間は症状の種類によって異なり、消化器症状では1〜4週間、皮膚症状では4〜8週間ほどで改善が見られることが多いとされています。ただし皮膚症状の場合、完全な改善には最長12週間ほどかかることもあるようです。
使用する食事にはおもに2種類あります。
- 加水分解食:タンパク質を細かく分解し、アレルゲンとして認識されにくくした療法食です。ロイヤルカナンのアミノペプチドフォーミュラや、ヒルズのz/dなどがこれにあたります。
- 新奇タンパク食:ラム、鹿、カンガルーなど、これまで食べたことのないタンパク源を使った食事です。
除去食で症状が改善しても、それで終わりではありません。次に「食物負荷試験」という工程に進みます。
これは、元の食事に戻して症状が再発するかどうかを確認するものです。具体的には、除去食試験の間に避けていた食材を、一つずつ順番に食事に戻していきます。ある食材を加えたときに症状がぶり返せば、それが原因だったとわかる、という仕組みです。
こうした手順を踏む理由は、症状が良くなったのがたまたま——例えば季節の変化や別の要因——だった可能性も否定できないからです。食材を戻して症状が再発して初めて、「この食材が原因だった」と確認できます。
なぜ「ゴールドスタンダード」と呼ばれているのか
BMC Veterinary Researchに掲載された論文(Mueller & Olivry, 2017)では、血清IgE・IgG検査や皮内テスト、リンパ球反応検査など、犬猫の食物アレルギー・不耐性を診断するために使われている複数の検査法を系統的に検証しています。その結果、除去食試験と食物負荷試験の組み合わせが、現在もっとも信頼されている診断方法だと結論づけられました。
除去食試験のもう一つの特徴は、診断のための試験でありながら、うまくいけばそのまま症状の改善にもつながる点です。食事を変えること自体が、そのままケアになっているとも言えます。
アレルギー検査(血液・毛髪など)との違い
アレルギー検査には、血液によるIgE検査、リンパ球反応検査、毛髪検査などいくつかの種類があります。これらの検査は、除去食試験とは少し違う位置づけで語られることが多いです。
ある動物病院の解説では、検査結果を先に見て、それを参考に除去食の内容を決めるという進め方も広がっているとしながら、こうした検査はあくまで「参考値」であり、確定診断にはやはり除去食試験が必要だと述べられています。
つまり、アレルギー検査だけで「この子はこの食材にアレルギーがある」と言い切ることは難しく、除去食で何を避けるかを考えるときの手がかりの一つ、という位置づけです。
なお、毛髪検査についてはさらに慎重な見方も存在します。前述のMueller & Olivry(2017)のレビューでは、血清IgE・IgG検査や皮内テストなど複数の検査法を系統的に検証していますが、いずれも除去食試験ほどの診断精度は認められていません。毛髪分析にいたっては、今回確認できた範囲ではこれを裏づける査読済みの研究が見当たらず、科学的な検証を経た手法とは言い切れません。
「最も信頼されている方法」なのに、なぜあまり知られていないのか
除去食試験がもっとも信頼できる方法だとしても、実行にはいくつかのハードルがあります。
期間中は例外が一切許されません。おやつや、薬に混ぜるチーズなども中止する必要があるとされています。うっかり口にしたものが一つあるだけで、試験の結果が不正確になってしまいます。
こうした手間の多さから、飼い主が最後まで続けるのが難しいケースもあると指摘されています。そのため、除去食試験ほどの信頼度はないものの、より手軽にできる検査のほうが、選ばれやすいのかもしれません。
まとめ
除去食試験は、犬の食物アレルギー・不耐性を診断するうえでもっとも信頼性が高いとされる方法です。一方で、血液検査や毛髪検査などは、参考的な位置づけとされることが多いようです。
犬の除去食試験はどのくらいの期間かかりますか?
症状の種類次第で、消化器なら1〜4週間、皮膚なら4〜8週間が目安です。皮膚症状の完全な改善には12週間ほど見ておくと安心です。
血液検査だけで犬の食物アレルギーと診断できますか?
血液検査は除去食の内容を決める参考にはなりますが、それだけでは確定診断になりません。確定には除去食試験と食物負荷試験のセットが必要です。
毛髪検査は犬の食物アレルギー診断に信頼できますか?
今回確認できた範囲では、毛髪分析を裏づける査読済みの研究は見当たらず、科学的な検証を経た手法とは言い切れません。診断の根拠として単独で用いるのは難しいとされています。
どちらの方法を選ぶにせよ、最終的に飼い主が直面するのは同じ壁です。除外すべき食材がわかったとして、じゃあ何を食べさせればいいのか。市販のフードの原材料表示を一つひとつ確認していく作業は、想像以上に手間がかかります。
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参考文献
- Mueller, R. S., & Olivry, T. (2017). Critically appraised topic on adverse food reactions of companion animals (4): can we diagnose adverse food reactions in dogs and cats with in vivo or in vitro tests? BMC Veterinary Research, 13, 275. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5577833/
- Olivry, T., & Mueller, R. S. (2020). Critically appraised topic on adverse food reactions of companion animals (9): time to flare of cutaneous signs after a dietary challenge in dogs and cats with food allergies. BMC Veterinary Research. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC7247231/
- Assessment of dog owners' knowledge relating to the diagnosis and treatment of canine food allergies. PMC. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6380261/
- Adverse food reactions: Pathogenesis, clinical signs, diagnosis and alternatives to elimination diets. ScienceDirect. https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S1090023318301321
- Elimination diet trials for pets with food allergies and intolerances. VNG. https://www.vngpets.com/blogs/news/elimination-diet-trials-for-pets-with-food-allergies-and-intolerances
- Food Trials in Dogs: Updates and Communication Tips. Purina Institute. https://www.purinainstitute.com/centresquare/therapeutic-nutrition/food-trials-in-dogs-updates-and-communication-tips
- 湘南ルアナ動物病院.【保存版】犬の食物アレルギーの検査と診断の流れとは? https://ruana-ah.com/blog/1410/